がっかりしているこおろぎ君を見て、おじいさんは言いました。
「うちでやればいい」
「でも凄くへたくそなんです」
「気にせんよ」
それからこおろぎ君は、おじいさんの側で毎日一生懸命お稽古をしました。
でもちっともうまくなりませんでした。
「こんなに練習しているのに、どうしてうまくならないんだろう。このまま地球に帰っても、またみんなにバカにされる・・・」
「みんな?」
「仲間のこおろぎです。お前はこおろぎのくせにバイオリンも弾けないのかって・・・」
「それでここへ来たのかい?」
「みんなの知らないところでこっそり練習したかったんです。でも僕はやっぱりダメです」