何年目かの5月 月末のチュウ
何年目かの5月 月末のチュウ

月末のちえチュウは飢えている。いつもは仕事が終わったらさっさと帰ってしまうちえチュウだが月末は違う。

会社持ちで夜食を食べに行くとなれば、必ず参加している。そして時々「今日は焼き肉にするか」と社長が言うと「やっほうぃ!赤い肉でチュ!」そう言いながら飛び跳ねて喜び、お昼ご飯を抜いて万全の体制を整えるちえチュウ。

何年目かの5月 月末のチュウ

赤い肉とは「牛肉」のことである。
いつも貧しいちえチュウの食卓には「肌色の肉」つまり「100グラム58円の豚肉細切れ」もしくは「100グラム98円の鶏肉切り落とし」以外の肉は登場しないのであった。

きゅるきゅると鳴る、自分のお腹の音を伴奏に「赤い肉〜♪赤い肉〜♪美味しい美味しいあっかい肉〜♪」と歌っている。

仕事をさくっと切り上げ、お店に直行。着いたとたん、メニューも見ずに「極上ロースでチュ!」と叫び社長に睨まれたちえチュウ。「あ、赤いお肉なら何でも良いでチュ」と遠慮がちに言い直した。

まずは軽くビールで一杯。ちえチュウはくらくらした。お腹が空きすぎていて、あっという間にアルコールが廻ってしまったのであった。しかしここでひるんではせっかくの赤い肉を目前に負けてしまう。

程なく、目の前には次々と赤いお肉や野菜が運ばれてきた。ちえチュウは、野菜には目もくれず、頑張って一月分の赤い肉を食いだめした。

何年目かの5月 月末のチュウ

「もうお腹がはち切れそうでチュ。これ以上は食べられないでチュ」5人前の上ロース、2人前の上カルビを平らげたちえチュウは、Gパンのボタンを外した。

幸せな気持ちで店を出たちえチュウ。ところが一歩店を出たとたんにうずくまってしまった。「う、気持ち悪いでちゅ」食べ過ぎである。「ちょっと吐いたらスッキリするよ」という周りの声にも「そんな勿体ないこと出来ないでチュ」と言い、しっかり口を手で押さえながらのたうち廻るちえチュウ。

次の日お腹を壊したうえ胸焼けもとれず、だるーい一日を過ごしていたちえチュウのモニターには、浅野(仮名)作の壁紙が貼られてあった。「腹八分目」勘亭流の大きな文字が眩しく光っていた