ちえチュウ先輩
ちえチュウ先輩

かもねぎハウスに新たな新人が登場して、ちえチュウは先輩になった。後輩の名はリカにゃん。小鳥ちゃん並に食が細いネコである。リカにゃんのパパは会社を328個ほど経営しているらしく、リカにゃんはいわゆるお嬢様なのだそうだ。

「んじゃ、とりあえずコーヒーを入れてきてくれたまえ」社長はリカにゃんに指令を出した。ところが30分たってもリカにゃんは炊事場から帰ってこず、様子を見に行ったちえチュウはびっくりした。

社長の好物ネスカフェエクセラをフィルターに入れてお湯を注いでいたのである。なんとお嬢様リカにゃんは、インスタントコーヒーをご存じではなかったのだ。何度やってもフィルターに粉が残らないので、おかしいと思ったらしく、何度も入れ直していたのであった。

ちえチュウ先輩

ところで、ちえチュウは机の引き出しに小銭を貯め込んでいる。缶ジュースを買いに行く時はこっそり引き出しを開け、小銭を探すのである。しかし月末になると、この小銭も尽きてくるのである。

「あれっ?ないでちゅ。おかしいでちゅねぇ。。。今月はもう終わりでちゅかねえ」どうやら小銭が尽きたようであった。「ジュースが買えないでちゅ。。。」悲しそうにたたずむちえチュウに、リカにゃんは声をかけた。

「先輩。よろしかったらこれを使って下さいな」そっと1000円札を差し出したのである。暫くじーっとお札を見ていたちえチュウが言った。

ちえチュウ先輩

「なんでちゅか?これは?」
「お札ですけど、あそこの販売機は使えませんでしたっけ?」
「ジュースは120円でちゅ」
「ええそうですわね」
「こんな紙ではジュースは買えないでちゅ」

なんとちえチュウはお札の存在を知らなかったのである。

「せ、先輩。。。これもお金なんです」
「これがお金でちゅか?」

さんざん浅野(仮名)にひどい目に遭わされてきたちえチュウは、疑り深くなっていたのである。リカにゃんの言葉を半分疑いながら、自動販売機に向かった。

「あ、こんなところにお札を入れる穴があったでちゅ。気がつかなかったでちゅねー」

そしていつものお茶のボタンを押したら、なんと、お釣りの口からじゃらじゃらお釣りが出てきたのである。

「なんでちゅか?!機械が壊れたでちゅか?!」ちえチュウは驚いてしまった。
「先輩。。。おつりですわ」

ちえチュウ先輩

いつもきっちり120円を握ってジュースを買いに行くちえチュウは、初めてのおつりに大変興奮したのであった。

そんなちえチュウを見て、ポケットからボビンレースで縁取られたシルクのハンカチをとりだし、そっと涙を拭いながら「先輩のためなら、わたくし何でもいたしましてよ」と心に誓うリカにゃんであった。