富士山

私は意味無く富士山が好きである。

東京へ移動するときは、爆睡していても必ず富士山が見える頃には目を覚まし窓にへばりつく。なので指定を取るときは必ず「富士山側の窓側」と、恥ずかしげもなくみどりの窓口で切符を買う。

ところがこんなに張り切っていても、富士山はなかなか綺麗に見えない。いつも上の方がかすんで裾のしか見えなかったり、はたまた全体的にもやっていて、頂上の方がすこーしだけ見えたりで、がっかりである。それでも雨が降っていても、真っ暗な夜でも、少しでも富士山がみえないか?と、諦めきれずにしつこく窓にへばりつく。

そんなこんなで、なかなかスッキリ綺麗に富士山を見ることが出来ないのであるが、先日遂に綺麗な富士山を見ることが出来たのである。すかっとした青空をバックにどどんとそびえ立つ富士山。頂上付近にはうっすら雪が積もっているようで、まさに教科書や写真でみる正しい富士山がそこにあった。

これには大感激である。ああ、生きていて良かった、なんてことを思えるくらい綺麗だった。

そういえば、昔知り合いが東京に出張中奥さんが流産しかけて大変な事になっていると連絡を貰い、慌てて京都に戻って来たことがあった。その時帰りの新幹線の中から見えた冨士山は、すんばらしく綺麗で思わず彼は両手を合わせて富士山に向かって妻子の無事を祈ったそうである。祈りが効いたかどうかは定かでないが、奥さんは無事可愛い男の子を出産なさっていた。

そんな話を思い出しながら、どどんと目の前にそびえ立つ富士山を見たら、やっぱり私も祈ってしまった。

「3億円当たりますように」しかし祈る前に宝くじを買えよと、自分で突っ込んでいた。

富士山