犬バカたち

その1---------------------------------

ひなたは原付の免許証を持っている。

バイクには乗らないが、証明書としては大活躍である。郵便局からのお届け物は殆ど不在で持ち帰られ、あとで郵便局へ取りに行く。

ある日いつものように郵便局の窓口へ不在票と、定期入れに入った免許証を並べて差し出した。すると

「名前と住所のわかるモノを見せて下さいね」とおっしゃった。

何を言っているんだろう?と思いながら「これです」ともう一度、手元をよく確かめずに免許証を差し出した。

「可愛いのはわかりましたから、住所と名前を見せて下さい」とおっしゃった。

よく見ると私が差し出していたのは免許証ではなく伝兵衛の写真が入った反対側であった。あわてて「すいません、これです」と免許証の方を向けて見せた。

荷物を受け取ると「うちにもいるんですよ、ゴールデン」と窓口のおじさん。 「へー、そうなんですかぁ」と話し込んでしまった私。

その2---------------------------------

近所の写真屋さんで写真からシールを作ってくれるサービスをしていた。

以前から伝兵衛のプリクラを作りたかった私は、早速伝兵衛の写真を持ち込み、いろんなサイズでシールを作ってもらった。

しかし冷静に考えると、あまりにも犬バカな行動なので少し恥ずかしくなり、出来上がりを引き取りに行くときはささっと帰ろうと思った。のに、お姉さんはわざわざ袋からシールを取り出し「これとこれで間違いないですか?」とお訊きになった。

すると隣に並んでいたおばさんが「あらかわいい。うちにもいるのよ、同じのが」ときた。

するとお店のお姉さんも「うちも飼っているんです。わたしなんて、山ほどシールつくっちゃいましたよ」と自慢げな笑顔。

その後店の中で犬話に花咲いたのは言うまでもない。

犬バカたち