化粧

ひなたは普段じぇんじぇん化粧をしない。

たまーに何かの取材とかでお写真を撮られる事があると、非常にあせる。いくら何でもスッピンじゃまずいだろうと、いちおう化粧を試みる。

化粧水やら乳液やら、なんじゃかんじゃを目の前にずらーっと並べて途方に暮れる。
「えっとぉ。。。どれから塗れば良いんだっけ?」
頭の中はぐるぐるまわり、すでに宇宙の謎状態である。

さらに服装だが、伝兵衛と一緒に暮らすようになっておしゃれとは縁が無くなった。普段はコットンシャツとGパンである。

ある日夫がお仕事でお手伝いをしている舞台を見に、大阪まで見に行くことになった。朝、いつものように出かける準備をしていたら

「その格好で行く気?」と夫が言った。

その日の私の装いはスリーエフさんのプレゼント用に私が描いたイラストで作った「まるころTシャツとGパン」であった。

「何で?」と聞くと「いい歳なんだから、もうちょっと何か無い?」だって。

まぁたしかに向こうで仕事の人に会わないとも限らないし、仕方無しに着替えた。

久しぶりに開けたワードローブ。じぇんじぇん着なくなっていたワンピースやらスカートがずらーっと並ぶ。こういう格好をしていた時代もあったのねぇ。と、しばししみじみ。

ようやく着替えて靴を履いていたら、後ろから伝兵衛が私のスカートをふんふん匂い、ぺろっと嘗めた。私の黒いスカートの裾に、ナメクジが這ったようなぬめっとしたものがべったり付いた。

「ふっ」何度もこのような目にあっているので今更何とも思わなくなっている私にちょっとびっくりしたが、着替えることなく、伝兵衛の「味見跡」が付いたスカートをはいたまま平気で出かける自分にさらに驚愕。

こうしてみんな、ちょっぴりムツゴロウさんに近づいてゆくのだろうか?そんなことを考えながら駅に向かった夏の日の午後。

化粧