近所の人々

諸般の事情で、伝兵衛は一週間、家でお留守番することになった。
以前社長が入院していた「10日間」の次に長い記録である。はたして伝兵衛はちゃんと一匹で留守番が出来るのか?

前半は、少し抵抗しつつも(朝吐いたり、うんちが緩かったり)なんとか大丈夫そうだが、さすがに後半はこっちも心配になってくる。その上ご近所の方々も「伝ちゃん留守番?ずーっとカーテンかぶりながらワンとも言わずに外を見てるのよ。大丈夫?」と声を掛けて下さるようになる。

木曜日からは鍵を2件先のお宅に預け「時々覗いて下さいね」と、私も甘いなぁと思いつつもお願いする始末。そのお宅もわんこ3匹(ゴールデンと小型犬)を飼っておられて、何かと伝兵衛のことも気に掛けて下さっている。

時々覗いて下さるどころか、午前中はガレージでみんな一緒に遊ばせてくださり、朝夕夜と3回も散歩に連れ出して下さり、10時、2時、7時と日に3回おやつまで下さる。しかも伝兵衛がお留守番と聞きつけたご近所の方が、あれやこれや差し入れを持って来て下さったり。

そんなわけで、私が仕事から戻ると、玄関にはバナナやパンやおやつなど、いろいろお供えしてあるのである。

私は、なんて良いご近所に恵まれたんだろう。と、しばし幸せを噛みしめつつ伝兵衛に「いいかい、良くお聞きなさい。こんなに親切にしていただけるのは、ひとえに「私の」普段の行いなんだからね。もっと私に感謝するように」と言ってみたが、伝兵衛ときたらお供え物をじいっと見つめ、私の話なんて聞いてもいなかったのである。

近所の人々