桜が綺麗な季節になると、日本人に生まれて良かったとしみじみ思う。
伝兵衛と散歩中、鴨川のベンチに腰を下ろし(何故か奴も一緒にベンチに並んで座る)しばし桜をぼーっと眺める。
そういえば友人の高梨くみも、毎日自宅そばにある桜並木を小太郎と散歩しながら、あと何回こいつと一緒にこの満開の桜を見ることが出来るんだろう?と、ふと考え、しみじみしたと言っていた。
私もそれを思い出し、あと何回伝兵衛と一緒に、桜の季節を迎えられるんだろう?あと20回は無理?でも10回はクリアしたい。そんなことを考えると、今こうして並んでベンチに座っている時間がいとおしくなる。。。
なんてことをしみじみ考えていたら、伝兵衛が急に立ち上がり走り出した。油断していた私は、体制を立て直して踏ん張ることが出来ず、伝兵衛に引きずられていった。
そこには、今、まさに袋からパンを取りだし食べようとしていたお花見中のアベックがいた。伝兵衛はアベックの前でとても良いお座りをして、パンを持つお姉ちゃんに「ひとくち下さいビーム」を発していた。
「た、食べる?」ビームにやられたお姉ちゃんは、おそるおそるパンを差し出して下さった。「すいません、すいません」食い意地の張った伝兵衛の代わりに何度もお礼とお詫びを言い、逃げるようにその場を立ち去った。
「花よりだんご」伝兵衛には過去も未来も関係ない。目の前のパンが全てなのであった。