信頼度

普通犬は、家族やひとつの団体の中で、自分より下の位を一人定めるらしい。
伝兵衛の場合はどこで躾を間違ったのか(というより、最初から躾ていなかったとも言う)唯一自分より偉いのは社長で、以下全員は家来と認定しているようだ。

ゴールデンを飼って、やってみたかったことのひとつに「ノーリード散歩」がある。よそのわんこは、ゴールデンに限らず結構ノーリードで、ちゃんと言うことを聞いて飼い主の人と楽しそうにお散歩をしている。
伝兵衛の場合、散歩は常にリードを引っ張り、行きたい方へ行く。リードを外したら最後、好き勝手に行動してこっちの言う事なんて聞きやしない。

ところが、唯一社長だけは、このノーリード散歩が出来るのである。もっとも周りに人がいないのを確認した場所に限るが、ちゃんと呼べば戻ってくるし、リードが無くてもぴったりとなりをおとなしく歩くのである。

お正月田舎に帰ったときに「練習してみれば?」と言われた。いくら人気が無い山道でも、勝手に走って行かれたらお手上げである。どきどきしながらもパンを持参してチャレンジしてみることにした。
まず、あたりに人がいないのを確認してリードを外す。外したとたん伝兵衛はダッシュで走って行った。焦った私は「伝兵衛!パン!」とパンを高々あげた。

パンに気づいた伝兵衛は猛ダッシュで戻ってきてじーっとパンを見た。よしよしひとかけらだけあげた。すると伝兵衛は少し私の前を歩き振り返ってパンを見る。ちょっと先に行きかけたら呼び寄せ、パンをひとかけらやった。

「ううむ、これじゃあ、パンの切れ目が縁の切れ目だな」そんなことを考えながらも、ノーリードの散歩をしばし堪能。程なくパンがなくなり、リードを付けた。
パンなしで、これが出来ればなぁ。。。
私と伝兵衛の信頼関係はかろうじて食べ物で繋がっているのである。

信頼度