お薬で何とか治療を続けていた伝兵衛だったが、ちっともらちが明かず、この度さくっと切ってみることになった。いわゆる手術である。
手術と言ってもお昼頃連れて行き夕方には迎えに行くという簡単なモノだ。しかし「手術」というものが初めてなのでどきどきした。
病院に着いたときは相変わらず先生の顔を見て嬉しさのあまりちびり、やっほーいとはしゃいでいた。奥の部屋に連れて行かれても尻尾をふりふりわんわんとうるさいくらい元気だった。
しかし夕方迎えに行った頃には「なんかブルー入っちゃってますよ。今まで見た伝兵衛の中で一番おとなしい」と看護婦さん達が口を揃えておっしゃた。確かに伝兵衛は何となく元気が無くとっとと車に乗り込んでぼーっとしていた。自宅に付いてからもひたすら眠りこけ、ご飯も食べないままだった。
麻酔がまだ残っているのかなぁ?と思いつつ、そのままそーっとしていたら「い〜しや〜きいも〜」と、この秋初めての焼き芋やさんの声である。死んだように眠っていた伝兵衛はむくっと起きてわんわん吠えだした。どうやら食欲が出てきたようだ。
「明日1日くらいは元気がないかもしれませんが。。。この子の場合は大丈夫かなぁ」と、「ぶっ」と吹きながらおっしゃっていた先生。さすが先生。予感的中。次の日は何事もなかった日のようにいつもの伝兵衛になっていた。
ハートの形に毛を剃られたお尻の傷跡は痛々しいが、本人は至って元気である。さすが餅は餅屋。蛇の道は蛇。わんこのことは、獣医に聞けってことだと納得したのである。