今年の京都は暑い。ここのところ気温38度を超える暑さである。暑さに弱い伝兵衛はほとほとまいってしまい、とうとう具合が悪くなった。

しかしお医者様へ行くにも、炎天下を15分歩かせるわけには行かず、仕方ないので行ったことが無くて様子が分からなかったが、歩いて5分の一番近くのお医者様へ連れて行った。

初めての病院にもかかわらず、伝兵衛はやっぱり病院が好きなようだ。待合室で順番待ちしている間中ずーっと、診察室の扉の前を掘り掘りして戸が開くたび中に入ろうとする。その度可愛い看護婦さんに「もうちょっと待っててねー。順番だからねー」となだめられる。待合室であまりにはしゃいでいるもんだから「どこが悪いのですか？」と他の患者さん達に聞かれるしまつ。

いざ診察を受け、点滴をして貰うことになったのだが、じーっとさせるために看護婦さんががしっと体をかかえて下さった。抱きつくような格好になっているのである。すると伝兵衛は看護婦さんの肩に顔をのせ、うっとりしてなごんでいる。点滴の間中ご機嫌だったのは言うまでもなく、名残惜しそうに診察室を後にしたのである。