貧乏性

ひなたの自宅は物であふれかえり、ごちゃごちゃ散らかっていた。
伝兵衛は狭いところが苦手なようで、物と物の間を通る時はかなり緊張している。 尻尾があたって箱でも落ちた日には、腰を抜かすくらいびっくりするのである。相変わらずの小心者である。

そういうわけで、伝兵衛がびくびくお部屋を通らずにすむように、張り切ってお部屋の模様替えした。
今回の模様替えは、思い切って使わなくなった家具を処分することにした。 すると、あたりまえだが家具が無くなった分、お部屋の中がひろーくなったのである。

ところが、模様替え後の伝兵衛は、なんだか落ち着かない。あっちをうろうろこっちをうろうろ、部屋の臭いをかぎ、そわそわしている。
「どうした伝兵衛?お部屋の中が随分ひろくなったでしょう。さあさあ、真ん中で寝たらいいよ」
そういう私の申し出を無視して、伝兵衛はどうしたか?

部屋のすみっこで、背中を壁にくっつけて寝たのである。人が腰を痛めてまで家具をどかしたというのに。
貧乏くさい犬である。

貧乏性