お正月恒例の里帰り。伝兵衛は宿敵倉迫兄妹と再会した。
ところが、倉迫兄妹は以前のような無茶をしなくなっていたのである。兄妹仲良く伝兵衛と遊んでやってくれるのである。しかもお手をした伝兵衛に、ちゃんとおやつをやっている。なんてことだ。今までいくら伝兵衛が頑張って、お座りやお手やふせをしても、決しておやつをくれなかったのに。
二人ともいつの間にか伝兵衛を追い越して、お兄ちゃんとお姉ちゃんになり、ちゃんと伝兵衛の面倒を見ている。子供の成長はなんて早いのだろう。
ご飯の時間になり伝兵衛にドックフードを出してやっていると、なっちゃんが来て「私が伝兵衛にご飯をあげる」と言ったので、まかせた。
伝兵衛のお茶碗にドッグフードを入れてやり、お座りをさせお手もさせた。「じゃあ食べて良いよ」そう言ってなっちゃんはお茶碗からドッグフードを一粒取って、伝兵衛の目の前に置いたのである。
「あれ?」一瞬伝兵衛の声が聞こえたようだった。
目の前の一粒を食べると、なっちゃんはまた伝兵衛にお手をさせ、ドッグフードを一粒与えた。伝兵衛は自分のお茶碗の方をじーっと見ながらも、前に置かれた一粒のドッグフードを食べていた。
いつもは食事に3分もかからない伝兵衛であったが、この日は30分以上かかってしまったのである。
やはり、倉迫なつみはあなどれないのであった。