理解力その3

ひなたは、よく転ぶ。道に段差があるわけでもない。真っ平らな道でもすってんころりと、見ている人がスカッとするくらい景気よく転ぶのである。

散歩のしつけをしなかった伝兵衛は、散歩の時は自分の行きたい方向へ引っ張る。首輪が食い込んで痛そうだが、ぜえぜえ言いながらも行きたい方向へ引っ張る。

何も無くても転ぶひなたは、伝兵衛に引っ張られると益々バランスを失って転んでしまうのである。すると今まで引っ張っていた伝兵衛はどうするか?さらに引っ張ったら蹴りを入れてやろうと思うのだが、不思議なことにピタッと立ち止まる。そして転んだ私の側へ来てふだん気の抜けた横座りしかしないくせに、きちんとお行儀よくお座りをする。
さらに起き上がるまでじーっと見ているのである。「見てないで助けたれよ」と私は心の中でつぶやき、自力で起き上がるのである。

起き上がったあと伝兵衛は、心なしかゆっくり私の歩調に合わせて歩くのである。それはいちおう奴なりに気を使っているということなのか?
解っているなら、どうして最初からゆっくり歩かないのかね?と問いかけてみるが、全く効果が無いのが悲しい。

理解力その3