お正月、くらさこ兄妹と再会した伝兵衛は、大喜びで二人について歩いていた。
このくらさこ兄妹は、相変わらず「お手」や「お変わり」を要求するが、手に持ったおやつは決して伝兵衛には与えない。なかなか手強い相手である。
しかし「ちゃんとお手をしたら、伝兵衛におやつをあげんといけんよ」と母親にたしなめられたくらさこ兄妹は、仕方なしにおやつを伝兵衛に与えたのである。そして、今度は美味しそうに食べる伝兵衛を気に入ったのか、手当たり次第におやつを与え始めたのである。
私が気づいた時には、伝兵衛はすでにミカンを3〜4個食べた後だった。
「伝兵衛がお腹壊すといけないから、もうあんまり食べさせないでね」と言ったのだが「もっと伝兵衛に食べさせたい」とくらさこ兄妹はくいさがった。「じゃあこれだったら・・・」とクリスマスパーティーの時に浅野に買って貰った「犬用えびせん」を渡してやった。
暫くすると、くらさこ兄妹は口いっぱい何かをほおばっていた。「犬用えびせん」であった。「伝兵衛はお腹壊すといけないから、あんまり食べちゃいけないんだよね」大好物の「犬用えびせん」を殆どくらさこ兄妹に食べられてしまった伝兵衛であった。