お正月はだんなの実家で過ごした。
家の周りは人通りも少ないので、首輪を外して伝兵衛を遊ばせてやった。毎日伝兵衛は、たんぼや川を駆け回り、どろんこになるまで、のびのび駆け回っていた。ところが、強敵が現れた。
それは、くらさこなつみ1才8カ月のお嬢ちゃんだ。
なっちゃんは自分より遥かに大きい伝兵衛を見ても恐がることなく近寄り、思いっきり口に手を突っ込んだりして遊んでいた。手に持っていたおやつを伝兵衛に取られそうになったりしても、キット睨み、もにょもにょ言っていた。
彼女の言葉は何だか良く聞き取れないのだが、伝兵衛に文句を言っていることだけは私にも理解できた。
なっちゃんは「お手」がいたく気に入った様で、取りあえず「お手」と伝兵衛に命令をした。伝兵衛はおやつ欲しさに、何度も言われるがままに「お手」を繰り返していた。しかしなっちゃんは、手に持ったおやつを伝兵衛にやることなく自分で食べていた。
いつも大抵の人たちは、目があっただけでおやつをくれるのに、なんだか勝手が違い困惑していたようだが、手荒なことは出来ない相手と本能で理解していたのか、なっちゃん相手に無茶はせずにおとなしく後をついて歩いていた。
そうして溜まったストレスを伝兵衛は、私で発散していた。