ある日ご近所の人に尋ねられた。
「前から不思議で、すんごい気になってることがあるんだけど、聞いてもいいかな?」
「ええ」
「あのプールは誰が使っているの?」
プール。
ガレージ横の物干し竿に干してある、子供用のビニールプールのことである。しかしうちには子どもは居ない。まさか私が入って遊ぶわけでもないし、スイカを冷やすためのものでもない。
そう、それは伝兵衛のプールである。
あまりの暑さにぐったりしていた伝兵衛をふびんに思った、うちのスタッフが買い与えてくれたものだ。子供用のプールの中でもかなり大きいものなので、泳ぐことは出来なくても35kgの彼でも十分体を水に浸けることは出来る。
はっきり言ってご近所の中でも一番の大きさで、子どもが羨ましがるほどである。
ガレージが空いている日には、プールに水を張ってやる。
すると彼は急いで家から出てきて水の中におとなしく浸かっている。まるで温泉にでも入っているかのように、気持ちよさそうである。そうして夕方涼しくなると水を抜いて、物干し竿に干して乾かすのである。だいたい週に2度くらいは活用している。
「えー?やっぱり犬のプールやったん?へええー」
ご近所の人は笑いながら去って行った。