伝兵衛は朝起きるといつも尻尾を振って「散歩につれてけ!!」と側へ来る。
その日は朝から凄く雪が積もっていて、とても散歩出来る状態ではなかった。しかし伝兵衛は「散歩散歩」と尻尾をふりふり側から離れない。
そこへ朝からこたつにパワーブックを置いて、寝ぼけた頭を覚ますためにコーヒーを飲みながら、インターネットを楽しんでいた人がいた。
私が「散歩」に行きそうもないと思った伝兵衛は、その人のところへ行き、散歩を催促しようと尻尾を振った。すると、尻尾はコーヒーカップを直撃し、たっぷり入っていたコーヒーはパワーブックを直撃した。
次の瞬間「シュウ」と言う音と共に静かにパワーブックの画面が消えた。一同呆然とする中、伝兵衛はその人の顔をぺろぺろ舐めながら尻尾を振っていた。
ものすごい雪の中その人は命がけでパソコン屋さんへ車を走らせた。何日か経ってからお店へパワーブックの様子を見に行ったら、「いやー、まだパワーブックの中から、コーヒーの匂いがしますよお」とニコニコしながら店員さんが答えてくれたことが、とても印象的だった。
このパワーブックはまだ帰ってこない。