私は右手に湿布薬を貼る羽目になった。
部屋中湿布の臭いが充満した。臭いをかぎつけて伝兵衛が私の側へやってきて、湿布薬を貼っている辺りをくんくんと臭いを嗅ぎ、気に入ったのか、側から離れない。
湿布薬を張り替えようとすると、興味深げに隣でじーっと見ている。あんまりおとなしく見ているもんだから、少し切って、彼の鼻のあたりに貼ってあげた。
すると彼はことのほか喜び、尻尾をぱたぱた振っていた。以来彼は湿布を張り替える度隣に座り鼻を突き出してくる。
仕方なしに、少し切って貼ってあげると、又尻尾をぱたぱた振って喜びながら去って行く。
ある日彼は喉に何かつかえたのか、吐き出していた。見ると湿布薬だった。貼るだけでは飽きたらず、味見をしてしまったのだろう。それ以来彼は湿布薬を見ても、側にこなくなった。